世界金融危機下における中国の「国進民退」(2) 2010/06/24(木) 09:27:5...

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世界金融危機下における中国の「国進民退」(2)

【コラム】 2010/06/24(木) 09:27

台州市における政府指導下の所有と経営の分離

  浙江省東部沿岸に位置する台州市は、08年現在で人口574万を有し、1人当たりGDPが6880米ドル、輸出入総額138.11憶米ドルで、うち輸出は117.64億米ドルにのぼる。同市は台州市区のほか、臨海市、温嶺市の二市および玉環、天台、仙居、三門の四つの県からなる。主な産業としては、オートバイおよび同部品製造、製薬、家具、造船などがある。

  世界金融危機の影響で09年の対外輸出は前年比で14.4%減少し、100億ドル台をかろうじて維持した。また09年上半期における同市の経済成長率は4.4%にとどまり、浙江省で最も停滞した地域となった(データは台州市統計局により)。

  改革開放初期における公有企業(かつての人民公社企業やその後の郷鎮企業、国有企業)にいち早く「株式合作制度」(持ち分を株式の形で保有する一種の協同組合制度)を導入し、高度成長を継続してきたとして知られている同市では、08年のGDPの99%は民営企業により作りだされている(「民資占比99%、台州主導民企股份再造」『21世紀経済報道』09年8月26日)。ミシンの製造で有名な飛躍グループや新傑克グループをはじめ、天天物流、通宇ホールディングズ、彪馬グループ、山河実業、清泉医薬化工、競宏紡績などの著名な民営企業がこの地域で、いわゆる「草の根」の創業過程を経て大型化した。しかし、台州市経済貿易委員会の08年の調査によると、同市の民営企業9万社の79.2%が個人や家族によって所有されており、経営面においてもオーナーに絶大な権限が集中している。こうした所有と経営の未分離のもとでの台州民営企業は、平均して3年から5年という短命な存在であり、10年以上継続できるのはわずか30%に過ぎないという(「台州民企“股改”」『第一財経日報』09年10月9日)。

  09年7月28日、台州市共産党委員会は、「民営経済の革新的発展を加速させるための綜合改革措置についての決定」(『関於加快民営経済創新発展綜合配套改革的決定』台市委発〔2009〕53号)を通達し、「企業所有制度の改革を促進し、コーポレート?ガバナンスを健全なものとし、株式所有構造を再編し、民営企業の所有と分離を促進し、(中略)産業における資本構成の合理化を図り、民営企業発展の径路依存状況を打破することを通して、5種類の資本(民間、株式、外資、国有、銀行)の相互連動制度を構築」する政策を打ち出した。この政策の実施に当たり、26の重点プロジェクトが指定され、それぞれ市経済委員会、市科学技術委員会、市発展改革委員会、市税務局など19の政府機関の責任者が直接的に担当することとなった。

  このうち、総資産額が100億元以上の5社、50~100億元の10社、10~50億元の30社の民営企業を対象に、「513プロジェクト」と呼ばれる株式構造の再編計画が日程に載せられたほか、「民営企業株式再編3カ年行動計画」のもとで、売上高が5億元を超える民営企業に対し、2009~2011年の期間中に株式所有改革を完了させるとしている。その一環として、09年には24社の企業を対象に上場会社の財務基準を満たす株式再編が行われた。この政策の最終目標は、現在台州市経済の99%も占める民営経済の割合を68%に低減させるという(『第一財経日報』09年10月9日) 。

  こうした改革計画は06年時点ですでに計画されていたと市経済委員会主任は言明している(『第一財経日報』09年10月9日)。実施に踏み込むきっかけとなったのは、08年3月の「飛躍グループ」の財務危機にあったという。同グループの再生に当たり、政府の指導のもと、7社の発起人企業が1年近く協議を重ね、09年1月には「新飛躍グループ」の設立にこぎ着けた。新しく企業登録した「新飛躍グループ」は、資本金3億1600万元、そのうち「星星グループ」が31.65%、「飛躍グループ」が30.38%、台州市椒江区国有資産運営会社が14.24%、「中捷ミシン」が6.33%、「浙江海正グループ」が4.75%、「新傑克ミシングループ」が3.16%、それぞれ保有することとなった。「旧飛躍グループ」の創業者である邱継宝が「新飛躍グループ」の会長に就任するものの、社長には元「上海工業ミシン株式会社」社長の卜偉平が就任し、法人代表者にもなっていた。興味深いのは、邱は「息子は後継ぎではなく普通のサラリーマンになったほうが良い」と語り、オーナー経営者の座を譲ったということである(『第一財経日報』09年10月9日)。

  台州市の場合は、オーナー経営の弊害を是正しようとするものであるが、政府と企業の間における権力の非対称性は結局のところ企業の所有構造に基づくガバナンスをゆがめてしまう可能性が高い。台州市のような民営企業の発展により地方の財源が豊富になった地域においてのみ、国有資産管理会社は民営企業に介入する原資を持つことができる。台州の場合は、政府と民営企業との間に一種の生命共同体関係が結ばれ、政府の所有により企業の繁栄が止まってしまうならば、地方政府が継続して介入する原資を失い、結局のところ「国進」は持続することができない。

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