世界金融危機下における中国の「国進民退」(1) 2010/06/23(水) 11:36:0...

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世界金融危機下における中国の「国進民退」(1)

【コラム】 2010/06/23(水) 11:36

  2009年においても世界経済の不振は続き、国際貿易が縮小しつつあるなか、輸出依存度の高い中国東部沿岸地域は、景気後退の局面に陥っている。一方で、内モンゴルをはじめとする内陸地域の経済高度成長はそれと対照的で、結果として09年の中国経済は「保8」(GDP成長率8%の確保)」の目標を達成した。ただし、そのことは「国進民退(国有企業が進み、民営企業が退くこと)」による結果だという批判が噴出した。
「国進民退」または「再国有化」といった動きは、どのような形で進展し、そこにはいかなる含意があるのか。金融危機に対処するための一過性のものなのか、それとも今後の中国の経済改革を方向づけるものなのか。ここでは浙江省紹興市における「民営企業監督管理制度」の導入、同省台州市における民営企業への所有と経営の分離改革、および山東省における山東製鉄よる日照鉄鋼の買収事件、09年の中国における「民」と「官」の攻防として最も典型的な3つのケースに焦点を当て、この問題を検討してみる。

  結論から言えば、いずれのケースも金融危機に起因する財務問題を契機として国有ファクターのプレゼンスは拡大した。理論的には企業の一時的な資金難に対しては銀行からのつなぎ融資で対処できるので、政府が企業に介入する必然性など存在しない。現行の中国金融システムの下では、民営企業が金融調達において差別的に扱われている状況に加え、金融危機の影響による資本市場の低迷が続く中、民営企業の融資ルートが絶たされている。しかし、上述した三つのケースにおいては政府介入の仕方がまたそれぞれ異なっている。

紹興市の「民営企業監督管理制度」

  日本では紹興酒で名を馳せている紹興市は浙江省東北部、長江デルタ地域に位置する古都として知られている。08年現在、437万人の人口を有する同市(地区級市)では、1人当たりGDPが7330米ドルに達していて(同市に属する紹興県の場合は1万2292米ドル)、中国有数の「先に富めた」地域の一つである。08年に対外貿易総額は238.37億米ドルにのぼり、うち輸出が147.95億米ドルを占め、「外向型経済」の典型的な地域でもある。また輸出に占めるアパレル関連の割合が63%に達するなど、紹興市は中国最大の紡績産業集積地である(データは紹興市統計局より)。
1990年代後半から公有企業の民営化や民営企業の盛んな創業が行われた結果、04年においてはGDPに占める私営企業の割合が96%にも達している。04-07年の4年連続で、同市の民営企業は中国民営企業トップ100社に最も多くランクされている。08年においても売上高が3億元を超える大型企業は、紹興県だけで117社に数えた(「做大之惑:紹興開啓民企監管時代」『21世紀経済報道』09年7月25日)。

  しかし、世界金融危機が直撃し、多くの民営企業は経営難に追い込まれた。同市の江龍ホールディングスは22億元超の負債を抱えこんで破たんし、政府は救済出動を余儀なくされ、同様のケースが続出した。そこで紹興市政府は、09年7月に「新しい経済情勢下に民営企業に対する監督管理の強化を図るための調査と考え方」(以下では「民営企業監督管理制度」)という内部報告書をまとめ、年初から行われてきた民営企業に対する介入活動の制度化を図った。

  紹興市の「民営企業監督管理制度」には、三つの内容が含まれる。まず第1に、「企業財務監督管理合同会議」と呼ばれる組織を作る動きである。これは5月に紹興県財政局に設立されたもので、財政局副長が委員長を務める下、税務署、警察、検察、司法、工商局、電力などの18の部門の担当者が招集されている。その目的は「紹興県民営企業財務監督管理に関する危機予告情報システム」の構築にあるという。同システムは、年間売上高100万元を超える1369社の民営企業を対象に、その財務情報についての虚偽申告や不透明性などの問題に対処するという。

  第2の内容は民営企業の金融活動に対する会計検査?監査制度(「審計」)の導入である。中国の「経済警察」との異名を持つ「審計」は、1983年に設立されて以来、主に国有部門を対象に、政府予算の執行における正確性、公正性及び経済性について検査する制度であった。紹興市ではこれまで経営難の大型民営企業に対して政府資金が注入されているため、そうした企業に対して公的な審計はやむを得ないと言わざるを得ない。しかし、今般の制度は一般的な民間企業の財務報表(企業が工商、税務、統計といった諸政府部門に月?四半期?年ごとに財務諸表を提出する制度があるが、内容についての信ぴょう性が疑問視されている)についても審計の対象となる。

  第3の内容は、民営企業に共産党組織および党規律検査委員会を設立し、状況により党組織の責任者を派遣するという「助企指導員」制度の導入である。09年初にすでに19人の政府関係者が21社の大型民営企業に駐在するようになっている。そして紹興市の大型民営企業1200社に対する調査では、300社の企業が「助企指導員」を歓迎すると答えている(『21世紀経済報道』09年7月25日)。こうした「助企指導員」は、政府機関の現役若手幹部のほか、定年退職した「老幹部」も担当することになっているが、基本的に週に2日程度企業に出向き、専門的問題の解決や外部の利害関係者との仲介役を務めている。ちなみに、企業は「助企員」の給料を負担せず、また受け入れを断ることも可能であるという(「被誤読的紹興助企指導員制度」『市場導報』09年11月12日)。

  紹興市の場合、いわゆる「民営企業監督管理制度」に含まれる民営企業を対象とする財務危機予防システム構築や公的監査システムの導入は、むしろ市場の失敗への是正という含意を持っている。市場経済メカニズムがまだ完全に確立されていない中国においては、企業経営者が外部の利害関係者に比べ、経営情報に関して圧倒的な優位性を持っている。それを利用した中国の民営企業においては、脱税や製品情報の隠ぺいといった事件が後を絶たない。企業が儲かる場合には利益は経営者の手に集中するが、破たんした場合には経営者が海外に逃亡するなど、損失は社会的な負担となる。こうした「市場の失敗」は、制度の構築とその厳格な施行により、ある程度是正されうるものである。

  また「助企指導員」制度においては、企業に政府機能が一方的に押しつけられたものではなく、専門的知識の提供や対企業外関係の潤滑化を図るものとなっている。これは政府による公共サービスの提供として考えられる。以上のような理由により、紹興市のケースについては「国進民退」に当てはまらないと、筆者は思う。(以上は中国研究所編、『中国年鑑2010』、「企業組織改革」を加筆修正したものである)(執筆者:王京濱 大阪産業大学准教授)

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